千里の道も一歩から

開業届、出す?出さない?個人事業主なら『出す』一択!

個人で仕事を始めるとき、「開業届は出すべきか、まだ早いか」と迷う人は少なくありません。
私自身、税務署への届け出るなんて仰々しいな、とそれだけで尻込みしていました。
けれど、開業届は収益化していなくても、事業を始めるなら「出す」一択です。
この記事では、開業届を出すか迷っている人に向けて、何故「出す」一択なのか。私が事業開始早々に届け出た理由と、出さなかった場合に起こり得たことをまとめます。

開業届、出す?出さない?届け出を迷う理由

事業を始めようと調べていくと、まずは「開業届」という言葉に行き着くと思います。
もう少し詳しく調べようと「開業届」と検索バーに打ち込むと、「出さない」「いつまで」「デメリット」などの予測入力候補が並び、もしかして届け出る必要はないの?と感じるかもしれません。
このような予測入力候補が並ぶのは、開業届を出すか出さないか、あるいは出すタイミングで迷う人がそれだけ多いということではないでしょうか。
実際、開業届は出さなくても罰則はありません。
私自身は事業開始早々に開業届を出しましたが、副業バレや税金への誤解などから「出す必要はないのでは」と考える人がいるのも事実です。
ここでは、開業届の提出を迷う背景を整理してみます。

その1:届け出なくても罰則がない

開業届については、所得税法に下記のように定められています。

(開業等の届出)
第二百二十九条 居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し、又は当該事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、若しくはこれらを移転し若しくは廃止した場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日から一月以内に、税務署長に提出しなければならない。

要は、新たに開業するなら1か月以内に開業届を出しなさい、ということです。

届け出なければ何か罰則があるかというとそうではなく、知らなかったり、後回しにしたりする人も少なくないようです。
それに、罰則がない=出さなくていい、という意味ではありません。
極端な言い方をすれば、開業届以外に公的に事業を行っているという証明はありません。補助金の申請や事業性口座の開設などでは開業届の写しの提出を求められることがほとんどです。私も事業性口座を開設する際の必要書類として開業届の写しを求められ、提出しました。
制度上の強制はなくても、実務上は提出しておいた方が確実です。

その2:「副業バレ」、「税金が上がる」などの誤解

「開業届を出すと副業していることが会社にバレる」「税金が上がる」といった声を見かけませんか?
なぜこのように言われるのかは、制度の仕組みを知れば理解できます。

会社員の場合、自治体が計算した住民税が毎月の給与から天引き(特別徴収)されるのが一般的です。
住民税は所得が増えれば高くなるため、副業分の収入があればその分も反映されます。給与からの天引き額が突然増えたのに、会社からの支給額に大きな変化がなければ――会社側に、給与以外の収入があるとわかる、というのが「会社に副業がバレる」と言われる理由です。

詳しくは「副業 バレる」などで検索してみてください。多くの税理士が解説しており、中には自治体の公式サイトで説明しているところもあります。

また、開業届を出したことで税金が増えるわけではありません。
課税額はあくまで所得(売上-経費)に基づいて計算され、極端なことを言えば開業したけど利益が全くでない、という場合は所得は増えないので住民税は増えません。

その3:収益化していないから様子見

「まだ売上がないから、開業届を出すのは早いのでは?」と考える人もいると思います。
「届け出なくても罰則はない」でも書いた通り、開業届は「事業を開始した日から1か月以内に提出」と定められています。
しかし、“事業を始めた日”とはいつのことでしょうか。
法律にその定義が詳細に書かれているわけではなく、結果として“事業を始めた日”を収益が出るタイミングだと考える人が多いのもわかります。

実際はどうかというと、事業活動を始めた日が「事業開始日」であり、利益の有無は関係ありません。
私自身、収益が出る前に開業届を提出しましたが、困ったことは一つもありませんでした。
むしろ、仕事としての意識が明確になり、帳簿の整理や経費計上もスムーズに進められました。
それどころか、事業に必要なお金を経費として計上できるのです。
特に副業として事業をスタートしている場合は、本業の所得と通算でき、税負担が軽くなるケースもあります。

 

事業開始を決めて早々、開業届を出した理由

事業を始めると決めたとき、私は迷わず開業届を提出しました。というよりも、「事業を始める時に出すものだ」という理解でした。事業に取り組む決意に加えて、前述した税制メリットのことも聞いていたので、事業をやると決めた後は早々に開業届を提出しましたが、もちろん最初は収益なんて出ていません。
それでも、開業届を出すことで、事業用口座の開設など、実質的に事業を始めるための基礎を整えられたと感じています。ここでは、私が早い段階で開業届を出した3つの理由を紹介します。

開業届提出後に取り組んだことはこちらの記事をご覧ください。

その1:事業として区切りをつけたかった

私のようにスモールスタートのケースや、副業でスタートする場合、最初のうちは「事業を行っているといえるのか」と迷う人も多いと思います。私も最初はそんな感覚でした。

開業届を出したことで、「これで収益を得るんだ」、という改めての決意にもなりました。
ランニングをやると決めて、はじめにシューズやウェアを揃えるような気持ちと近いように思います。
いずれにしても、自分で事業をする自覚を強くするにはうってつけでした。

その2:青色申告を使いたかったから

事業活動は、必ずしも収益が発生するものだけではありません。競合調査、ホームページの準備、交流会への参加、チラシの作成、営業活動など、事業を動かすための経費は意外と多いものです。
実際、私は開業届を出してから最初の収益が発生するまでに半年ほどかかりました。

こうした支出を経費に計上し、最大限の控除を受けるには、青色申告を選べる体制を整えておく必要があります。そのためにも、事業を開始したら早めに開業届を出すのがおすすめです。

特に副業スタートの方は、創業初期に収益がマイナスになりやすくても、給与所得と通算できるため、税制上のメリットになる場合があります。

その3:補助金・口座開設などにも必要

創業期をターゲットとした補助金や助成金の申請、事業用口座の開設などでは、開業届の写しを求められることがほとんどです。
その他にも、事業開始後に一度も確定申告をしていない場合は、確定申告の控えの代わりに開業届を求められるケースがあります。健康保険の加入、保育園に提出する書類などなど。
私自身も、事業用口座を開設する際や保育園の提出用に開業届を求められました。

個人事業主にとって、開業届は「事業を行っていること」を示す唯一の公的書類です。特に創業初期は、実績や売上のように事業の実体を示す資料が少ないため、開業届を出していないと申請や手続きが進まないケースもあります。

開業届を出しておくことで、必要な書類の準備や各種申請をスムーズに進められます。制度上の義務ではなくても、事業を進めるうえでは欠かせない手続きだと感じたこともあり、早々に提出しました。


開業届の提出は難しくない!提出すると変わること

開業届を提出というと、何枚もの書類を揃えなくてはいけないのかな、と面倒に思う方がいるかもしれませんが、実際はシンプルな書類1枚だけです。
提出そのものは決して難しくありませんが、その後は帳簿の管理が必要になります。特に青色申告の申請を行う場合は、帳簿管理も少し複雑です。
ここでは、提出後に変わったことを実務面と意識面の2つの視点で紹介します。

開業届の提出方法については、下記の記事にも詳しく書いています。

開業後の帳簿付けは必須!早めの準備が◎

開業届を出すと、事業の収支を記録する「帳簿」をつける必要があります。これが提出でかわる一番のことかもしれません。
とはいえ、必ず専門家にお願いしなければならないわけではありません。
私のような知識業の場合は特に、お金の流れが複雑でないため、少し勉強すれば自分でも対応できます。実際、私は青色申告の本を一冊読み、日々の会計管理から確定申告まで自分で行っていました。

個人事業として活動していた間は、Freeeなどの会計ソフトは使わず、Excel帳簿で管理していました。特に困ることはなく、日々の帳簿づけも確定申告も問題なくできています。

帳簿づけは慣れるまでは手間に感じますが、早い段階で仕組み化・習慣化しておけば大きな負担にはなりません。事業の全体像を把握するうえでも、日々の記録を続けておくことをおすすめします。

構想と事業の線引き

自分で事業を始めようと思った時、まずはどんな事業をするのか、サービスの展開方法、周知や営業の戦略など、さまざまなことを考えます。
開業届を提出したことで、「考えているだけ」から「実行する」に意識が切り替わりました。

どこか机上の空論になっていないかと感じていましたが、実際に取り組む大きなきっかけとなり、それまで構想していたことを形にし始めました。

仕事用のメールや口座を整え、経費を分けて管理するようになるなど、日々の判断基準も変わりました。形式上は1枚の届け出ですが、私にとっては“構想”と“事業”の境界を明確にする一歩だったと感じています。

まとめ|個人事業主なら「出す」一択!

開業届は、提出しなくても罰則がないため後回しにされがちですが、実務的には事業を始めるうえで欠かせない手続きです。
帳簿づけや青色申告の準備、補助金の申請、事業用口座の開設など、事業を動かす多くの場面で開業届の提出が前提となります。

私自身、開業届を出して困ったことは一度もありませんでした。むしろ、早い段階で体制を整えられたことで、その後の事務手続きが格段にスムーズになりました。
出さなかった場合に迷うより、まず提出して事業の基礎を作るほうが確実です。

開業届は、個人事業主としての最初の一歩です。
大きな準備をしなくても、書類一枚で事業を始める基盤を整えることができます。

  • この記事を書いた人

MeCAN

一生会社員だと信じて疑わなかったのに育休中に必要に迫られて起業した一児の母
●キラキラしてるだけが起業じゃない
●会社員時代と変わらない生活維持をすることが目標のひとり社長
●事業は会社員時代と同じ事をやっている知識業

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